手札の判定だけでなく、場に出たカードを記録することで残りシューの構成を推定し、統計的に有利なときだけベーシックストラテジーから外れる「カウント例外(デビエーション)」、そして予算に対して今いくら賭けるべきかまで反映する仕組みを説明します。
見えたカード1枚ごとに、Hi-Loシステムの値を足し合わせた合計値。2〜6 = +1、7〜9 = 0、10・J・Q・K・A = -1。低いカードが多く出るほどプラスに、高いカード(10・A)が多く出るほどマイナスに動きます。
(使用デッキ数 × 52 − これまでに見たカード枚数) ÷ 52。シューが進むほど小さくなります。
ランニングカウント ÷ 残りデッキ数。同じランニングカウント+4でも、残り5デッキなら+0.8、残り1デッキなら+4と意味が大きく変わるため、これを揃えて比較できるようにした値です。デビエーションの閾値はすべてこのトゥルーカウントを基準にしています。
特定の「手札 × ディーラーのアップカード」の組み合わせに限り、トゥルーカウントがある閾値(インデックス)を超えたとき/下回ったときだけ、ベーシックストラテジーの推奨から切り替える例外ルール。以下の§4がその一覧です。
ベーシックストラテジーは「シューに残っているカードの構成が平均的(新品のシューと同じ比率)」だという前提で計算された最適解です。しかし実際にはゲームが進むにつれて特定のランクに偏りが生まれます。たとえば10・J・Q・K・Aが相対的に多く残っている状況では、追加の1枚でバーストする確率が上がる一方、ディーラーも同様にバーストしやすくなるため、際どい手札では「引かずに止まる」方が得なケースが増えます。逆に低いカードが相対的に多く残っている状況では、追加の1枚でバーストしにくく、ディーラーがブラックジャックになる確率も下がるため、「引く」「倍賭けする」方が得になる場面が出てきます。
この偏りを数値化したものがトゥルーカウントであり、偏りが実際に損得を逆転させるほど大きいと判明している組み合わせだけを列挙したものが、次のデビエーション表です。
カードカウンティング研究家 Don Schlesinger が示した、6デッキ・ディーラーS17・DAS可のルールでEV改善への貢献度が最も大きい18パターン。この18個だけを覚えれば、理論上可能な全デビエーションの価値の8〜9割を回収できるとされています。サレンダーがある卓向けの「Fab 4」(サレンダーの例外4パターン)は、PitCallのルール上サレンダーが無いため対象外です。
| 手札 vs アップカード | 基本の行動 | 例外の行動 | 閾値(トゥルーカウント) |
|---|---|---|---|
| インスシュランス | 取らない | 取る | +3 以上 |
| 16 vs 10 | ヒット | スタンド | 0 以上 |
| 15 vs 10 | ヒット | スタンド | +4 以上 |
| 10,10 vs 5 | スタンド | スプリット | +5 以上 |
| 10,10 vs 6 | スタンド | スプリット | +4 以上 |
| 10 vs 10 | ヒット | ダブル | +4 以上 |
| 12 vs 3 | ヒット | スタンド | +2 以上 |
| 12 vs 2 | ヒット | スタンド | +3 以上 |
| 11 vs A | ヒット | ダブル | +1 以上 |
| 9 vs 2 | ヒット | ダブル | +1 以上 |
| 10 vs A | ヒット | ダブル | +4 以上 |
| 9 vs 7 | ヒット | ダブル | +3 以上 |
| 16 vs 9 | ヒット | スタンド | +5 以上 |
| 13 vs 2 | スタンド | ヒット | -1 以下 |
| 12 vs 4 | スタンド | ヒット | 0 以下 |
| 12 vs 5 | スタンド | ヒット | -2 以下 |
| 12 vs 6 | スタンド | ヒット | -1 以下 |
| 13 vs 3 | スタンド | ヒット | -2 以下 |
「10 vs 10」は手札の合計が10のハードハンド(例: 6+4、7+3)を指し、ペアの「10,10」(10と10を2枚持っている状態)とは別項目です。PitCallはこの2つを区別して正しく判定します。
デッキ数の設定は、トゥルーカウントの計算式の分母(残りデッキ数)に直接使われるため、実際に使っている卓の枚数に必ず合わせてください。ここが合っていないとトゥルーカウント自体がずれます。
一方でデビエーション表(§4の18パターンの閾値)そのものは6デッキ・S17・DAS可を基準にしたものを、8デッキにもそのまま使っています。デッキ数が変わると理論上インデックスが1前後動くケースがありますが、6デッキと8デッキの差は実務上ごく小さく、多くのカウンティング教材でも共通の表を使うのが一般的です。より高精度な8デッキ専用の指数が必要な場合は、専門書籍(Don Schlesinger, Blackjack Attack 等)を参照してください。
ベーシックストラテジーとデビエーションは「今の手札でどう打つか」の最適解ですが、ベットサイズは「今このハンドにいくら賭けるか」という別の問いです。カウントが高い(トゥルーカウントが高い)ときほど残りシューがプレイヤーに有利に偏っているため、賭け金を大きくし、逆にカウントが低い・マイナスのときは小さく賭ける(あるいは最低額に留める)のが、期待値を最大化する基本セオリーです。
エッジ ≈ -0.5% + 0.5% × トゥルーカウント。6〜8デッキ・S17・DAS可・ベーシックストラテジーでの標準的な近似値で、トゥルーカウント0のとき house が約0.5%有利、トゥルーカウントが1上がるごとにプレイヤー側へ約0.5%動くとされています。
資金を長期的に最大成長させる観点から導かれる最適賭け金比率。賭け率 = エッジ ÷ 分散(ブラックジャックの分散は概ね1.3)で「予算の何%を賭けるべきか」を算出します。エッジがマイナスのときはケリー基準上の最適解は「賭けない」ですが、PitCallでは最低ベット額(設定していれば)を推奨します。
フルケリーは理論上最速で資金を成長させますが、変動(分散)が非常に大きく、実際の資金がすぐに大きく上下します。実務では半分(ハーフケリー)や1/4に抑えるのが一般的です。PitCallの既定値は1/2ケリーです。
固定予算は、セッション開始時に入力した金額を毎ハンド共通の基準として使い続けます。可変バンクロールは、ハンドごとの損益を入力して実際の残高を追跡し、その時点の残高を基準に次の推奨額を計算します。可変バンクロールの方が理論的には正確ですが、毎ハンドの損益入力が必要です。
Illustrious 18の数値(§4)は、以下2件の独立したソースが完全に一致することを確認した上で採用しています。
いずれもDon Schlesinger Blackjack Attack – Playing the Pro's Way を一次情報として引用しています。ベーシックストラテジー本体の出典は 設計書 を参照してください。
ベットサイズ(§6)の「-0.5% + 0.5%×トゥルーカウント」というエッジ近似式と、分散1.3を用いたケリー基準の式は、Wizard of Odds「Introduction to the High-Low Card Counting Strategy」およびBlackjackInfo「Blackjack School - Money Management」に記載の一般的な数値を採用しています。